伝えたい言葉があるんだ。他の誰でもない、お前に。
願っていたことは、自分が巻き込んでしまったあの少女の幸福。
時々何かを探すように空を見上げてた。
遠い、帰ることの出来ない場所を探したんだろうか?
あんな、寂しそうな瞳をしてほしくなかった。
だけど同時に望む。
ここにいて欲しい。側にいてほしい・・・そう望んでる。
遠い故郷じゃない、この国で、他の誰でなく自分を見てほしかった。
試験の前の不安そうな瞳。
明るく話していてもどこか淋しげに見えた。
迎えに行くか、だって?
そんなことはありえない。
帰らせない。俺の前から消えてしまうなんて。
そうなった時、俺はどうなる。
たった1年。なのに、出会う以前の自分がわからない。
どうして、知らずに日々をすごせたのか。もう、それすらもわからないんだ。
『帰してやるよ。』その言葉は、本当のことだった。それは間違いない。
でもそれがいつ、偽りに変わっていったのだろう。
それとも、そう思う俺の心というやつは、2つくらいあるんだろうか。
帰してやりたかった、あいつが、願う故郷に。
帰したくない。俺の手の届かない場所に。
ここじゃ、駄目なのか? この国はお前の故郷にはならないのか?
帰らないと言った言葉を覚えてる。
でも不安になる、本当に、本当にいいのか?
お前は帰りたかったんだろう?
今日の試験。結果によってお前はこの国の人間になる。
実力を言うなら、まったく心配なんてしていない。
間違い無く、一人前の魔道士としてやっていけるだけの実力は身につけてる。
でも、それを望まなかったら。
ここに居ることを・・・望まなかったら?
わがままに見せていても、やさしいお前だから、俺に気をつかったんじゃないかって。
そう考えたら言えなかった言葉。言ってしまえばお前をしばりつけるようで。
お前が選ぶ道を俺が決めることはできないから。
・・・きっとずるいんだな。お前が自分で選ぶことを逃げ道にしてる。
お前がこの世界で選ぶことを・・・どこかで信じている。
いつも笑顔でいるのはお前の強さだと思う。
それに甘えているんだろうか?
・・・それでも、俺は。
明日、結果が出たならば、その時は言えるだろうか。
『側に居て欲しい、誰より大切で、愛している。』と。
選んで欲しいんだ、ここにある未来を。
俺はいつだって、お前の側にいるから。
穏やかな風が吹きぬけていく。晴れ渡った空には雲ひとつない。
明るい空と裏腹に、難しい表情で、王宮への道を歩いていく。
隣を歩くメイの表情も、いつもと違って真面目なものだ。
目の下にくま。こいつでも、緊張して眠れないことがあるんだな。
目指す場所−王宮前の広場−が近づくにつれて、表情がころころと変わる。
しかめっ面だったり、急に笑顔になったり、はたまた頭を抱えたり。
でも、どんな表情もかわいいと思ってしまうあたり、自分であきれてしまうんだが。
・・・ま、いいか。
「やったー!! ほら、77番、あるでしょ。ね、ね。」
ここにいる誰よりも嬉しそうな声ではしゃいでいるメイ。
「ああ、そうだな。・・・信じられんことだが、合格のようだな。」
「もう、信じられないって何よ。あたしの実力なら当然ってものでしょ。」
「・・・の割には、夕べは眠れなかったようだけどな。」
「うっ、・・・もう、人の顔をじろじろ見るんじゃない。」
「図星か・・・。」
「・・・・・・・」
真っ赤になって俯いている姿があんまりかわいくて、抱きしめたくなってしまう。
満開の花は、祝福するようにゆっくりと頭上を舞っている。
「・・・おめでとう。」
「えへ、ありがとう。」
「メイ。」
「キール?」
「話が・・・あるんだ。」
「なに? キール。」
ずっと伝えたかったことがあるんだ。
聞いてくれる・・よな。
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