毎日、楽しいこと、ちょっと悲しかったりしたこと、嬉しいこと怒ること。
繰り返して行く。多分、幸福って、こういう日々のことなのかな。
でもね、本当に時々、立ち止まってしまうことがある。
ふと、周りを見渡す。隣には誰がいるんだろう?
「キールはさ、あたしが本当に元の世界に戻るつもりだったらどうするつもりだったの?」
それは突然の思い付き。言葉で言ってくれない、でも大好きな人に、聞いてみたくなったから。
「・・・さあな。」
予想通りの反応。でも、何か、楽しくなってくる。
だって、そっけない反応に見えても、少しあせってるのがわかるから。
「さあな、じゃ解らないわよ。ね、どうしてた?」
「・・・・・」
「・・・」
「・・・・・」
「もう、どーしてすぐ無口になるのかな。うーんとそうだ。じゃ、質問変えるね。」
「・・・・・まだ、あるのか?」
いつもなら、すぐに話題を変えるけど、今日はなんとなく聞いてみたいんだ。
「あるわよ、うーんとそうだね。私が元の世界に戻ってたら・・・迎えに来てくれた?」
「・・・・・もう、行くぞ。」
「質問に答えてな〜い。ね、どうしてた?」
「いきなり、何なんだ、お前は。」
ぶっきらぼうに言い放つ。でもそれが、本当に不機嫌な訳ではなくて、単に照れているだけだってことくらい、もう知ってるよ。この一年、ずっと側にいたんだから。
「答えてくれなきゃ、動かないからね。」
ツンと横を向いて立ち止まる。あきれたような、ため息が聞こえてくる。
ここで、怯んじゃ駄目だよね。
「今日は、お前の試験だろうが。」
そう、今日は魔道士の試験の日。
試験に受かれば、一人前の魔道士として、この国の人間になるの。
異世界からの来訪者、研究対象じゃなくて、対等な一人の人間に。
その道を選択したのは私自身、それが一番の望みだったから。
でも、どこか、本当にちょっとだけだけど、不安になってしまう。
ずう〜っと長い道で、ふっと周りを見ると何もないみたいに。
周りを見渡しても、一生懸命探しても、何も見つからないみたいで。
目を開くことが怖くなってしまう。
『ねぇ、私ここに居て良いの? この国は私の故郷になってくれるのかな。』
帰る場所も持たない、私は、誰? ここに居るのに。この国の人間じゃない。
故郷が欲しいから、帰れない場所の変わりにここを選ぶの?
だから?
そうじゃない、そうじゃなくて。
・・・望むのは、ずっと一緒に居たいって思ったのは・・・
あなたが居るから、この国が私の故郷になって欲しいのに。
何も言ってくれない、それでも大好きな人。
こんな不安になってる自分を見せたくなくって、明るく答える。
「大〜丈夫。だてにスパルタ教育受けて無いって。」
「その自信の根拠はどこにあるか、聞きたいものだな。」
本当は、ばれてるのかな。
言葉は相変わらずだけど、瞳がすごくやさしいね。
当たり前のように伸ばされた手は、いつものように髪を撫でている。
だから、やっぱり聞いてみたくなる。
「キール、話ごまかしてる。」
「・・・・・」
「駄目・・・かな。」
やっぱり、無理かなぁ。でもこんなこと簡単に聞けないし。
「・・・・・かない。」
「え?」
「迎えになんか行かない。・・・帰らせないから。」
葉と共に、すぐ、向うを向いてしまう。そして、そのまま歩き出す。
後姿の、その耳まで真っ赤だから、今日はここで止めとこっか。
『ね、どうして、帰らせないの』って。
今は聞かなくても良いかな。
私は魔道士の試験を受ける。
試験に受かったら、ずっとずっと一緒にいようね。
でも、その時は、ちゃんと言葉で言ってね。
そしたら、私も言うから。
「キールが、一番大好きだよ。だから、この国が私の故郷になるの。」
って、ね。
目を閉じて、ゆっくりと開ける。
隣にあなたが居てくれることが一番嬉しいんだよ。
|