満月の夜はいつも思い出す。
あの時の想いを…。
メイがダリスへ旅立つ前日。
メイに会いに行こうとした俺はふと、夜空から照らされる月を眺めた。
月はいつもの色とは違い、銀色に発色していた。
不思議な色…だな。
高貴でいて、それはまるで寂しさと無機質さを表すような色だと思った。
「いよいよ、明日か…」
照らす月に悟られまいと俺は一人ごちた。
ダリスへは一緒に同行するはずなのに、この思いは一体なんなのだろう。
確かにダリスへ行かせるのは不安がある。
だが、レオニス隊長やシルフィスがいるのだ、作戦は成功するだろうと確信していても。
それとはまた違う感情。
……分かっていた。それが何なのか。
あいつを…メイを危険に晒したくない。
あいつを護ってやりたい…。
あいつの側にいたい…。
「……」
俺はふと足を止め、廊下の窓辺に腰掛けると再び月を見つめる。
こんな感情を抱いたのは初めてだ。
誰かを護ってやりたいと思う気持ちは…。
月の光はそんな俺の心を照らし出しているようだ。
孤独に耐えられなくなった俺の気持ちを優しく照らすように。
同じなのか、月も。孤独に耐えきれずに己を銀色に染めているのか。
自分の孤独を隠すように…。
俺はメイのドアの前で立ち止まると、一つ呼吸をする。
分かってくれ、メイ…。
俺はお前を…護ってやりたいということを。
そして、お前を愛しているということも……。
数日後、2度目のダリスでメイは自分の世界へと帰れそうになった。
止めたのは、俺だった。
必死だった。
あいつを…もう手放したくなかった。
そんな気持ちを…月はただ静かに見つめていた。
「キール…?」
隣でメイが月を凝視したまま身動一つとらない俺を心配げに覗き込んだ。
「ん?どうした、メイ…」
「…なんだか、キールが消えそうに見えたよ」
「?」
メイの言うことを理解出来なかった俺はメイを見つめた。
「…月の光に溶け込んでしまいそうに見えたの…」
そう言うメイを俺は引き寄せて腕の中で抱きしめた。
「溶け込まない…さ。俺にはお前という太陽がいるのだから」
「キール…」
俺の腕の中で体を預けるメイ。
そう、俺は消えやしない。
同じ思いの銀月に消えやしない。
お前が、お前が俺を必要としてくれる限り、俺はお前の側にいるから。
今夜もメイに会いに廊下を歩く。
そして、今夜は満月。
そして、月は銀色に染まる。
だが、不思議と寂しさや無機質さは感じ取れない。
銀色の月の光は今日も俺のメイへの想いを照らし始める……。
太陽に焦がれ、必要としている自分の想いを照らし出すように……。
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