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いつもの朝。
いつもの日常。
繰り返し、それが半永久的にそれがあると思っていた、あの頃。
今は・・・もう、来ない。
あの朝。
メイは、両手を万歳するかの様に挙げ、しなやかな動きを有している猫の様の背筋を伸びをした。
「今何時だろう・・・?」
メイは、寝癖の付いた髪をそのままに、重たい瞼をこすりこすり、キョロキョロと辺りを見渡す。
「・・・あれ。時計は・・・?」
だが、何処を見回しても、いつもの時計はない。それどころか、見渡す限り自分の知らない調度品その他諸々が置かれていた。
「・・・あれぇ?おかしいなぁ・・・?」
メイは、ぽりぽりと頭を掻きながら、まだかなり重たい瞼をどうにか半開きの状態にまでさせる。
「ここ、何処〜〜?」
まだ眠さが残っているメイは、ほとんど寝ぼけた状態でまるで夢遊病の様にのろのろと起き出し、そこでこつんと何かにぶつかる。横に何か異物があるようだ。温かくて、それでいて柔らかいもの。何だろう、これ・・・・?未だに寝ぼけているらしいメイは、本当の意味でそこで目を覚ますことになる。
「はぅわぁ〜っ?!」
何ともいえない悲鳴を上げ、メイはその場から器用にも一メートルほど飛び上がった。
そこに見掛たのは、亜麻色の髪をした青年。メイの悲鳴は、その青年の直ぐ側であげたので、青年を起こすには十分な程である。
至極無愛想極まりない表情で、青年は起き上がった。
「煩い」
すかさず冷たく言い放つ一言。開口一番、何ときつい言葉だろうか。メイがばくばくと口を金魚の様に開いたり閉じたりしている横で、青年は何事もなかったかの様に、ごく平然と乱れた髪をさっと撫でながら寝癖を直し、ベッドサイドに置いてあったいつもの愛用の眼鏡を着用し、身支度も整える。
「な、な、な・・・なんですってぇ〜〜?!このメイ様に向かって何を言うのよ!」
漸く驚きから解放されたメイは、怒りを露にし憤怒の形相できっと青年を睨み付ける。
「・・・朝から何をぎゃーぴーと騒いでいるんだ。寝れないだろうが」
相手は、よく慣れたものでひらりと身をかわすかの様にすかさず返してくれる。復讐さえ思い起こさせないほどの烈火の口の早さだ。
「〜〜〜〜っ!!」
メイは、相手を睨みながら、ぶりぶりと烈火の如く怒り狂う。
「大体にして、何で男がいるのよ!この純真、汚れのない乙女の横に!一体、誰の許しを得て・・・!!」
「・・・はぁ?お前、何をぼけているんだ?」
メイの叫びに対し、青年は心底呆れ返ったように白い目でメイを見遣る。
「あんたこそ、何よ!」
挑戦的な瞳で、メイはきっと睨みつける。余程馬鹿にされた事が悔しいのだろう。目が三角にかなり釣り上がっていた。
「・・・おい」
青年は、そこで彼女の異変に気が付く。
「本当に、お前は大丈夫か?」
同情、憐れみの様な感情を秘めた瞳で、今度は見詰める青年。それから、じっとメイの顔を覗き込む。
「な、何よ!?」
メイは、顔を真っ赤にさせながら、青年から逃れる様に後ろに後退する。しかし、青年は、逃げようとするメイを逆に逃すまいと彼女の腕を捕らえると、自分の方に抱き寄せる。
「・・・本当に大丈夫か?」
先程の強い口調は一切感じられなく、相手を真摯に気遣い、心配する優しい口調だった。
メイの心臓の音が一つ跳ね上がった。
「・・・・・」
漸くここで、メイは大人しくなった。いつも天真爛漫な彼女がぴくりとも動かなくなった。
代わりに心臓の鼓動がばくばくとその反動の代わりの為か鳴り響いて止まない。青年の深緑の瞳が彼女をじっと捕らえて止まない。そっと近付いてくる瞳が、そして、優しくいつの間にか触れる額の手の温もりが、彼女の心臓をより早く打ち続けさせた。
そうだ。
いつもこの瞳を知っている。
いつも一緒に居る人ではないか。
それに、一緒に暮らしている。
大切な人なのに・・・・。
(あ、あれあれ・・・?あたし・・・本当に馬鹿な事を考えていたんだろ?)
そこで、漸く自分自身で、メイはある事を思い出す。
「・・・・キール」
メイは、やっと青年の名前を呼んだ。
「・・・ご免。あたしの方が悪かったみたい」
メイは、何処となく居心地が悪そうにキールから目をそらす。キールは、
「・・・・一体、どうしたんだっていうんだ?」
「・・・・・」
言っても、果たして信じてもらえるかどうかという疑問に行きついてしまったメイ。だが、この気持ちの悪いもやもやはいやだったので、キールに打ち明ける事にした。
「・・・あのね、多分寝ぼけていたと思うの」
「・・・・みたい、だな」
いわなくてもそれは分かるだろうとばかりに、キールは言葉を返そうとしたが、そこでやめてしまう。メイの話を聞こうとしての事だった。
「今さっきまで向こうの世界にいた感覚で、起きたらいつも向こうで暮らしていた朝と全く同じだと思って・・・・」
変な体験をしたものだけれども、先程のメイは本当にそういう感覚で居たのだ。かつての日常をどうして思い起こし、それに錯覚したなどとは到底本人にも理解できなかったが。
「・・・・・・」
「だから・・・」
「帰りたくなったのか・・・?」
彼女が帰らなくてもいいと言ってから、日数はかなり過ぎ去っていた。だが、キールにふと過ぎる不安。いきなり現れた少女は、今もいつ居なくなってもおかしくないのだ。ずっと留まる事が出来るなんていう保証さえありえなかったから。もし居なくなったら、自分は追い掛ける覚悟はあっても、やはり何処か不安が過ぎるのは仕方が無い事だった。
「・・・・・正直言うと、よく分からない」
メイ自身も否定はしなかった。一緒に暮らし始め、最初の朝から幾つ数えただろうか。どうして、あんな感覚を覚えたのだろう。分からない。分からない・・。・・・・けれど。
「・・・・・・・」
言える事はただ一つ。
「・・・・だけどね、今言える事は、これが今のあたしにとっては日常なんだって事」
「・・・え?」
キールは、意外そうにメイを見つめる。その視線を受けながらも、メイは言葉を続ける。
「キールと同じベッドに寝て、同じ朝を迎えて、一緒に暮らしているのが・・・。今のあたしの日常だって事。それが、ずっと続いていくと今は思っているって信じているって事」
そこまで言って、メイは先程の錯覚とも思えるものが何だったのか少しだけ分かった気がした。
いつもの朝。
いつもの日常。
繰り返し、それが半永久的にそれがあると思っていた、あの頃。
今は・・・もう、来ない。
あの朝。
だけど。
今は、目の前にいる人と一緒に迎える朝がある。
周りには、前となかった、今の日常がある。
それが、今のあたしの日常。
今、彼女はほんの少しだけそう考えたのだった。
ふと訪れた別世界に紛れ込んだメイにとっては、日常とは何なのかと思ったら、こんなへんてこりんな創作が出来上がってしまった。すいません。 またへぼです(><。)甘くも無い、実も蓋も無い話でございます。
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