「キール!! 今度の休みは絶対に開けておいてよね」
メイとキールが想いを通じ合ってからしばらくたったある日、メイは突然前触れも無くキールにそう告げた。
「開けとかないと、元の世界に帰るからね」
キールは唖然としながらも、メイに『帰る』と言われてしまえば言う事を聞くしかなかった。
そして・・・見事に快晴となった、休日がおとずれた。
「で・・・何処へ連れて行こうというんだ」
約束に時間メイの部屋を訪れたキールは『さあ、出発よ』と、ドサッっと荷物を預けられ、少々不機嫌になり始めていた。
「着いてからのお楽しみって事で」
しかたがなさそうに後を着いて来るキールを時々確認しながら、メイは先を進んで行く。森を抜け、開けた先に、その目的地があった。
「着いたよ」
メイが好んでよく訪れる郊外にある湖のほとりで、キールに預けた荷物を受け取り、その中身を並べ始めた。荷物とは・・・お弁当だった。メイが珍しく早起きをして作った、渾身の作と言っておこう。
「キールはいつも研究で忙しいじゃない。折角の休みぐらいたまにはゆっくりしてもいいんじゃない?それに・・・一緒にでかけたかったし・・・怒った?」
ようやくメイはキールを連れ出した理由を説明した。最後の方は照れくさそうに上目遣いで聞いてくるメイを見て『可愛い』と思うあたり、キールも惚れた弱みであろう、先ほどまでの不機嫌もどうにかなってしまっていた。
「そう言う事は先に言え!先に!!」
湖のほとりの木陰で2人は昼食を取る事にした。
暖かな日差し、そよぐ風、いっぱいのお腹。ホっと一息ついたキールの肩に居眠りを始めたメイがもたれ掛かってきた。風がそよぐ度にメイの髪が揺れ、ほのかな馨りが漂ってくる。
「お、おい。メイ」
キールは真っ赤になってあたりを見まわしメイを起こそうとするが、キールが動揺して動いた為、メイの身体は崩れ落ち、丁度キールが膝枕をしているような体勢になってしまった。
「ふう・・・誰も居なくて助かったな」
ポカポカとした陽気に誘われて気持ちよさそうに眠るメイは、本当に幸せそうな顔をしていた。そんなメイを見ていたキールもつられて気持ちが穏やかになってきた。・・・と言うより、気が緩んできた。
「・・・ありがとう」
メイの髪を軽く梳きながらキールはふと言葉を漏らした。メイと出会った事に、メイがこの世界に残ってくれた事に。いや、自分を変えてくれる全ての奇跡に感謝して。
キールにはいつも言えない言葉があった。照れくさくて。メイが眠っている今なら言えるかもしれないと思い、キールはメイの耳元に囁いた。
「愛しているからな、これからもずっと」
「ん・・・」
そんなキールの言葉に返事をするように、メイはにっこりと微笑んだ。
「まだ、こいつに主導権を握らせる訳にはいかないからな」
惚れた弱みですでに主導権を握られているも同じではあったが、キールは密かに誓いを心に立てるのだった。
穏やかな昼下がり、暖かなひだまりの中で・・・。
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